魔法科高校の劣等生

MUSIC

LiSA×田淵智也×堀江晶太
「Shouted Serenade」
スペシャルインタビュー

――「Shouted Serenade」(作詞:LiSA、田淵智也 作曲:田淵智也 編曲:堀江晶太)は、TVアニメ『魔法科高校の劣等生』第3シーズン オープニング主題歌。制作はどんなふうに始まったのでしょうか?
LiSA
アニメ「魔法科高校の劣等生」が10周年を迎えて、新シリーズが始まるということで、「改めて主題歌をお願いしたい」というお話をいただいたのが最初です。「Rising Hope」(TVアニメ『魔法科高校の劣等生』オープニングテーマ/作詞:LiSA、田淵智也 作曲:田淵智也 編曲:堀江晶太/2014年)は私にとって大切な曲で、10年をかけてとても大きくなりました。そんな楽曲を作ってくれた2人に集まってもらって、あのときに感じた「やば!カッコ良くない?」みたいな感情をまた味わいたいなと思ってお声がけしました。
――「Rising Hope」はみなさんにとってどんな楽曲なのでしょうか?
LiSA
先輩(田淵智也)が私に作ってくれた初めてのアニメ・タイアップソングじゃないですか?
田淵智也
あ、そうか。
堀江晶太
そうなんですね。
LiSA
「妄想コントローラー」(1stミニアルバム『Letters to U』収録/2011年)からはじまって、先輩にはいろいろな曲を作っていただいて。最初のアニメソングは「Rising Hope」だったんですけど、先輩としてはどうだったんですか?
田淵
アニメソングを作るぞっていうより、LiSAの曲を作るぞという感じだったと思うし、それまでと変わらなかった気はするけどね。
LiSA
それまでに先輩が私に預けてくれた曲は、どちらかというとポップサウンドが多かった印象があるんですけど、「Rising Hope」はマイナー(キー)じゃないですか。マイナーの曲はあまり書いてなかったですよね?
田淵
苦手だから。
堀江
そんなことないですよね(笑)。
田淵
「Rising Hope」の第一稿もサビはポップだったんだよね。
LiSA
そうだっけ?
田淵
うん。当時のプロデューサーの山内真治さんに「サビをマイナー調に変えよう」と言われて。あのときは(LiSAの楽曲を手がける作家陣に)渡辺翔さん、草野華余子さんがいて、「カッコいい曲はあの人たちが書くだろうから、俺がやる必要はないだろう」という心構えだったんだよね。なので(「Rising Hope」の制作も)とりあえずポップな曲にしようと思ってたんだけど、サビをマイナーにしたら、ああいう形になったというのがいきさつです。
LiSA
そうだったんだ。晶太くんはそれこそ華余子さんが私に託してくれた「DOCTOR」のアレンジをお願いしたのが最初で。「DOCTOR」はその前に出したアルバム(『LANDSPACE』/2013年)に入っている曲で、私の女性の部分を出すという道筋を作ってくれた曲なんですが、晶太くんにアレンジしてもらったときに「やばくない?」ってなって。
堀江
うれしい。僕にとって(「Rising Hope」)は、この組み合わせの“はじめまして”だったんです。その頃の僕は新人というか、商業作家としてスタートして、まだそんなに長くなかったんですよ。「Rising Hope」はその後の自分、アレンジメントや作曲を含めて、作家人生の方向性を決定づけた曲だと思ってるし、初めて民放の放送に自分の名前が載った曲でもあって。「アニメの曲をやってます」と初めて言える曲になったし、そのおかげで作家人生を改めてはじめられたんだなと。その後「『Rising Hope』(のような楽曲)を作ってほしい」と言われることもあったんですよ。「僕がやったのは編曲なんだけどな」って思いながら(笑)。
――LiSAさんにとって「Rising Hope」はどんな曲だと言えますか?
LiSA
アニメの楽曲に初めて自分の思いを込めたんですよね。自分の思いを先輩に伝えて、それを組み込みながら作らせてもらった楽曲だから、私自身の思い入れや体験がすごくリアルに感じられるのに、アニメ作品にもすごく寄り添っているという。そういう経験は初めてだったから、愛情や思い入れはすごくあるし、ライブで歌うときも大事になり過ぎているというか。楽曲に対する責任の課せ方がすごく大きい気もしています。
――LiSAさんのキャリアにとってもきわめて大きい楽曲だと思います。「Rising Hope」から10年後のタイミングで制作された「Shouted Serenade」ですが、田淵さんはどんなイメージを持って作詞・作曲を進めたのでしょうか?
田淵
アニメの制作側からも「『Rising Hope』の“次”がほしい」という明確な意志を感じたので、そこに向かっていったというか。自分のマインドセットの話をするとちょっと話がこんがらがるんだけど、みんなよく「(前の作品を)超えよう」みたいなことを言ったりするけど、僕はそうじゃなくて。「超えられない」というところから作り始めるし、あまりプレッシャーもないんですよ。でも「たぶん出来そう」という気もしていて。発想自体は焼き直しでもいいし、とっかかりは「超えられないでしょ」でいいと思ってるんだけど、作っていくなかでどうしても捨てられない根性みたいなものが出てくるんですよ。そこからちょこちょこと細部を整えていって。「時間をかければ絶対にいい曲が出来る」という持論もあるし、あとはもう100回、200回と聴いて整えていくだけなので。それだけの制作時間を作れる時期をこちらからリクエストしたし、よりプレッシャーがない状態で作れる環境も与えてもらったので、“楽しかった”というか“出来るだろう”と思いながらやってました。
LiSA
最初の打ち合わせのときに、監督さんも交えて「『Rising Hope』って何なの?」という会話をしたじゃない?
田淵
うん。
LiSA
先輩は「作曲をするうえで」みたいな話をして、晶太くんはアレンジ面から話して。私のなかでは「Rising Hope」に込めた気持ちや楽曲のストーリーをいちばん大事に持っていなくちゃいけないなと思ってたんです。その後、先輩の仮歌が入ったデモをいただいて。それもとても良かったんですよ。先輩はずっと私の曲を作ってくれていて、信頼もしているし、「Shouted Serenade」に対する思いも全然ズレてなくて。なのでそのままでも全然良かったんですけど、いろいろ考えるなかで「自分の旬の気持ちも入れておかないと気が済まないぞ」と思って。
田淵
うん。「Rising Hope」のときも実はそうだったんだけど、アニメ作品のこともありつつ、ここしばらくの彼女の人生を投影したというか。そういう方向性の歌詞案が来たんですけど、確か文章に近い感じじゃなかった? 特にBメロ。
LiSA
ラップになってますからね(笑)。音のハメ方は先輩にお願いして。
田淵
そうだった。そこに書いてあったことがすごくよかったんですよね。LiSAというアーティストが今までに以上に認められて、「こういうところにも行きました」「こういう経験もしました」ということだったり、ファンに対する想い、LiSAでいることへの思いみたいなものも含まれていて。自分としては「この感じを入れていけばいいな」と思ったし、仮歌詞のフレーズを拾ってくれてた部分もあったんですけど、「一行前に自分の人生を書くことによって、仮歌詞の意味も違って聞こえる」という感じになればいいなと。そういう調整は得意なので。
LiSA
そうですよね。
田淵
もちろん“魔法科高校の劣等生”の原作小説も読んでいたし、仮歌詞を書いてる段階からアニメのこともある程度は意識していたんですよ。LiSAの人生と作品を掛け合わせて、「だったら残すべきフレーズはこれだろうな」という感じで整えて。その全部をブリッドして、LiSAのストーリーでもあり、“魔法科高校の劣等生”の話でもあり、「Rising Hope」の未来でもあるという歌詞になったと思います。こうやって振り返ると、すごく美しい制作だった気がしますね。
LiSA
その間、会話もしてないですよね?
田淵
してないね。
LiSA
ファイルだけのやり取りだったんですよ。電話して「ここはこうしたいよね」みたいな話はしてなくて。でも、いつもそうだよね?
田淵
そうだね。LiSAから送られてきた文章を読むと、「こういうことを考えてるんだな」とはっきりわかるので。書き出したら自分のなかのロマンも込められてしまうので、「このロマン、通れ」と願いながらやっていましたね。さっき晶太くんがリテイクの話をしてたけど、この曲に関してはそんなにチェックも入らず、すんなり進んだんじゃないかな。
――アレンジに関してはどうだったんですか?
堀江
今話してくれたようなやり取りも、ちゃんとわかっている状態で制作が進んでたんですよ。二人のやり取りの真ん中に立って「いいね」って言ってただけなんだけど、その地続きでアレンジに入って。作っていく段階のなかで「どうですか?」みたいな感じですね。これはアレンジの範疇をオーバーしてるんだけど、冒頭のメロディパートを変えちゃったんですよ。違う部分から持ってきて「これを冒頭にしたほうがよくないですか?」と提案させてもらって、そこからディスカッションして。基本的にはみなさん「いいね」って言ってくれたんですが。
田淵
褒め合いだ(笑)。
堀江
とにかく1から10まで共有していたし、全員がしっかり把握した状態で進んでいった制作でしたね。一気に全部を仕上げて送るというより、ある程度出来たところから「みんなが思っていることと違ってない?」ってヒヤリングして。大丈夫そうだったら「もうちょっと好き勝手やろうかな」という。実際の作業は1人が多かったんだけど、みんなでやってる感がすごくありました。
田淵
僕が作ったデモ音源に対して、「こっちのほうがよくないですか?」ってぶつけてきてくれるのがすごく面白いんですよ。晶太くんと一緒に制作するといつもそういうことがあるから、ワクワクしていて。
堀江
よかった。
田淵
別の曲なんですけど、「アウトロを丸ごと変えたいんですけど、どうですか?」とか。痒いところに手が届くというか、晶太くんのアレンジによって、俺がもっとすごいことをやってるように見えるというか(笑)。自分が作曲、晶太くんが編曲というパターンで作った曲はすべてにそれがあるんですよ。すごく助かってます。
堀江
うれしいです。田淵さんはすごく話を聞いてくださるし、もちろん信頼感もあるんですけど、アレンジャーとしては毎回「これでいいのかな?」という気持ちもあるので、そう言ってもらえると安心します。
田淵
頼りにしてますよ(笑)。
LiSA
それも「理解してくれてる」という信頼が二人の間に出来てるからでしょ?
田淵
そう。本当にありがたい。
LiSA
私はロジカルな説明が出来ないから、感情だったり、「ここはもうちょっと明るく」とか「ここは暗いほうがいいかな」くらいしか言えなくて(笑)。晶太くんと曲を作るときもそうだよね?
堀江
通訳してる感じです(笑)。LiSAさんが言ってることを音で具現化して、「あなたが言ってるのは、こういうことでしょ?」という。「Shouted Serenade」もそういう感じが多かったですね。場合によっては「それはアレンジの範疇じゃなくて、メロディのほうでやってもらったほうがいいかも」ということもあったり。それが出来るのもこのチームの強さだし、僕も“翻訳”は好きなんですよ。楽器を弾くのも好きだし、人からイメージを伝えてもらって、それを活かしながら音に変換するのもすごく好きで。お二人は自分がすべきこと、できないこともはっきりわかってるから、そういう意味でもやりやすいんですよ。僕が作ったものに対して「そう、それ!」とか「想像以上だ」って言ってもらえるのもうれしいし。
田淵
人と作ることの醍醐味って、そこにあるよね。「最高」「ありがとう」って言い合えるっていう。
堀江
目の前の人によろこんでもらえる瞬間、楽しいですよね。
LiSA
そういう人に出会えるタイミングはあんまりないじゃない? その最初の体験が「Rising Hope」のときだった気がしますね。もちろん、今ほどはスムーズに整ってなかったけど(笑)。
――ボーカルのレコーディングには堀江さんが立ち会ったそうですね。
LiSA
はい。先輩からは「すごく怒って歌って」って言われていて。なので私、フルパワーで歌ったんですよ。
堀江
心配になるくらいでした(笑)。
田淵
すごいよね、あれだけ歌えるって。
LiSA
(レコーディングは)ツアー中だったから、歌う感じになってたんですよね。
堀江
ボーカルのレコーディングにはいつも江口亮さんがいてくれるんですけど、LiSAさん自身が事前に設計図を作ってくるんですよ。アーティストによってはレコーディング当日に話をしてニュアンスを決めたり、「ここはこんな感じで歌ってみましょう」と進めるパターンもあるんだけど、LiSAさんは「これが私の思うベスト」という歌い方を準備してくれて。それがバッチリなので、後は歌ってみて何かあれば言うくらいなんです。「Shouted Serenade」もまさにそうで、LiSAさんの「これでいきます」という歌をロスのないように録るだけでした。
田淵
ボーカルの設計図でいうと、具体的にはどう準備したんですか? 聴かせてもらったときに「この歌詞、こう歌うんだ?」というのがいくつもあったんだけど。
LiSA
特に意識したのは2番のラップかな。歌詞のことになっちゃうんだけど、最初に私が書いた歌詞は、まだちょっと引きずっているというか、悲しげなフレーズもあったんですよ。そしたら先輩が「ちょっとナヨナヨしてるから、(歌詞で)怒ってみました」という感じで戻ってきて。覚えてます?
田淵
覚えてる。
LiSA
戻ってきた歌詞を読んだときに「確かにこのほうが最後のゴールにたどり着きやすいな」と思って。導いてもらったし、いちばんエネルギーを発散するのはそのパートだなと。
田淵
なるほど。勉強になります。
LiSA
(笑)私、楽譜に明確な“地図”をめちゃくちゃ書き込むんですよ。
堀江
ラリーカーの助手席の人みたいな感じですよね。「300m先、右に曲がる」みたいにレースの設計図を書いたノートを見ながら指示を出す人がいるんですけど、LiSAさんは両方の役割を一人でやってるというか。ここで息を吸って、ここはスピード感を出して……みたいな。特に「Shouted Serenade」はそれをやらないと歌えないだろうし。
LiSA
お2人の楽曲は全部そうです(笑)。ステージにパッと出ていって、最初からフルパワーで歌ったら、たぶん1番で歌えなくなるんですよ。歌の設計図を書いてから臨まないとそもそも歌えないし、曲のポテンシャルを出し切れない。まずは道筋をきちんと立てて、何度も練習して。「今回はここで転んだ」「この感じだと最後までたどり着けないな」みたいな調整をしながら完成形を作るのがレコーディングなんですよ。ライブのときはまた練習しなくちゃいけないんだけど。
田淵
そうだよね。全部通して歌うわけだから。
――ここまでの話のなかにも出てきましたが、改めて聞かせてください。この3人で音楽をやることの醍醐味とは?
堀江
僕からでいいですか? 音楽性とかスキルもそうなんですけど、作ってるときに「これ、めっちゃカッコよくない?」「いいね」って当たり前に言い合える現場って、そんなに多くないんですよ。3人とも率直だから「いいな」と思ったら「めっちゃいい」って言い合うんですけど、まず、その空間がすごく居心地がいい。たとえばプロデューサーが決定権を持っていたら、「いいな」と思っても「僕が“いいですね”と言っていいんだろうか?」と思ったりするので。このチームはお互いのモチベーションを確認しながら、同じ熱量で進んでいける。だからこそ安心感もあるし、「もっと実験してみよう」「こういう提案をしてみよう」と踏み込んでいけるんだろうなと思いますね。
田淵
これもまたいろんな目線があるんだけど、まずは晶太くんが言ったこととすごく近い感覚があって。それがどうしてうれしいかというと、音楽をやってる理由になってるんですよね。自分は音楽を作ることだけが人生だと思っていないし、音楽にすべてを捧げる、ここに骨を埋めると思って生きているわけではなくて。だからこそ仲間と一緒に音楽をやれる、仲間に喜んでもらえる、認めてもらえることが続ける理由になるんですよ。そういう現場があるのはすごくうれしいし、今回みたいに「ここぞ」というタイミングで登板させてもらえて。そこで「自分の感性、クサってないかな」と確認できるのもいいんですよね。「この人たちに嫌われずに音楽を作れてますかね?」というプレッシャーを感じながら制作できるのはすごく光栄というか。年齢を重ねて慣れてきたり、ちょっと名声なんかをもらうといくらでもサボれるし、誰も否定してくれないじゃないですか。自分で気づくしかないんだけど、たぶん気づけないんですよ、自分がダサくなってることには。このチームは「今も自分はこの人たちに嫌われずにやれてるか?」と背筋が伸びる場所でもあるし、それはパーマネントなバンドでは感じられないことでもあるんだろうなと。
――LiSAさんはいかがですか?
LiSA
私は……2人が言っていることを「そうだな」って思って聞いてました(笑)。
田淵
右に同じだ(笑)。
LiSA
これも言い方が難しいんだけど、私の感覚的には(3人で)バンドをやってる感じもあって。お互いに似てるところもあるし、全然わからないところもいっぱいあるんだけど、それも含めてちゃんと理解できるというか。また簡単なたとえになっちゃうけど、「お母さんとは毎日連絡を取ってるわけではないけど、なんか信用されている」みたいな感じもあるんですよ。人生のなかで、そういう信頼関係を作れる仲間がいるってとても素晴らしいことだなって思います。……はい(と泣きそうになる)。
堀江
あ、そこでグッとくるんですね。
田淵
久々に見た気がする。最近、泣かなくなったなと思ってたら。
LiSA
(笑)でも、難しくない? 友達を作るとか、大事な人や信頼できる人と出会うって。
田淵
いや、本当だよね。
LiSA
大変でしょ、特に大人になると。世の中に出て行くと「この人、気に入ってくれたかな」「あの人は楽しんでくれてるかな」って思ってるんだけど、この2人にはそんなことは思わないんですよ。
田淵
なんだろうね? こういう仕事ってたぶん華やかに見えるだろうし、名声ももらってるから……。この前、超スターが仲良い人とトーク番組で話してたんですよ。そのなかで「すごく悩みがある」「満たされてるけど、満たされてない」みたいな話をしていて。ネットの評価を見たら「そんなふうに言うなんて意外だった」という意見がいっぱいあって、ビックリしたんです。「いや、それはそうだろう」と僕は思って。「やっぱり外からは華やかに見えているんだな」と。何が言いたいかというと、「やめようかな」ってこともめちゃくちゃいっぱいあるんですよ。さっきも言ったように自分が望んでるような世の中にならなかったし、違う意見の矢も飛んできて。「別に俺がいなくてもいいか」と思うようなことは毎日のように転がっているし、やめようと思えばやめられるんだけど、「そうすると、あいつらに会えなくなるのか」とか「あいつに“俺、やめるんだ”って報告しにいくのってめっちゃダサいな」みたいなことが確かに抑止力になってるんですよね。そういう仲間に出会えたことは「マジメに生きてきてよかった」とも思うしね。
堀江
すごくわかります。もっと楽器が上手くて、アレンジも上手な人って絶対にいるし、「そういう人に頼めばいいじゃん」と思えば続ける理由なんてなくなっちゃうんですよ。でも「目の前にいるこの人は俺に頼んでくれたんだよな」とか「自分の音楽を好きだって言ってくれた」みたいなことがあって、それがいちばんの理由になっていて。逆にそれがなかったらやれてなかったかもしれないですね。「俺がいちばんだ」みたいな感じもそこまでないし、苦しみを味わうくらいなら目立たないように暮らした方がいいと思うこともあるんで(笑)。
田淵
その話、意外だなとも思うし、すごく親近感を覚えてるんですよね。晶太くんはすごい才能を持っているし、「映画(音楽)をやるんだろうな」とか「世界に行っちゃうんだろうな」と思ってたんですよ。でも「仲間と一緒にやってるのが楽しい」と言うし、キャリア設計も「何かを選んだ」という人生に突入している感じがするんです、俺から見ると。それに対しては「友達としてうれしい」みたいな喜びもあるし、「こんなにすごい才能の持ち主が、こんなに人間味のあることを言うんだな」みたいな気持ちもあって。
堀江
自分がそういう人間性を持ち続けられているとしたら、この2人がいてくれることがめちゃくちゃデカいです。もっと無機質な業界だと思ってたんですよ。いいものを作れば生き残るし、作れなくなったら……という。そういう側面もあるとは思いますけど、それだけじゃないんだなと。キャリアをスタートさせて早めの段階で2人に出会って。人間として接してくれる、人と人として向き合ってくれるクリエイター、アーティストが近くにいてくれるのはめちゃくちゃ大きいなと思ってます。
LiSA
私は、曲がなかったらステージに立てないので。やりたいことがあっても「明るく!」とか「暗くして!」みたいな話しかできないし(笑)、それを形にして、私に音楽をやらせてくれてるのはみなさんです。もちろん2人がいなかったら「Shouted Serenade」は出来てないし。……あ、わかった! なんで2人に頼んだのかって、私1人では「Rising Hope」の続きを作れないと思ったからだ。
堀江
そうあってほしい(笑)。
田淵
ハハハ。でも、うれしい言葉ですね。

ライター:森朋之